廃棄の少ない有機フッ素化合物合成の開発
フッ素原子を有する有機化合物は、優れた耐熱性や耐水性、耐酸化性、代謝安定性など、様々な特異的性質を持つ傾向があり、樹脂や塗料、撥水撥油剤などの化学材料、また、医薬や農薬に使われています。私は、有機合成反応の研究に携わっており、それぞれの反応条件下における「分子構造上の結合開裂と結合形成」や「反応の駆動力」に着眼しています。研究を進めていくうちに、現代において環境に調和する合成が必要とされていることを意識し、廃棄の少ない合成法に興味を持つようになりました。通常の合成でよく用いられる置換反応においては、出発物質の有する置換基の脱離を伴います。しかし、工夫すれば、脱離による廃棄を減らすこともできます。そこで、今、分子内の原子を反応中にて大きく損なわない、すなわち、原子効率の良いフッ素有機化合物の合成を目指しています。フッ素有機化合物の需要が高まる現在、より簡便で実用的なフッ素原子の導入法を見出すことは大変有意義です。フッ素化合物合成においても環境調和型の方法が多く開発されれば、工業的合成への発展にも繋がると期待しています。
物質・環境類
助教 杉石 露佳
- 月刊「化学」(化学同人), —2016 年の化学—「便利! 汎用試薬を使うトリフルオロメチル化反応」, 2017, 72, 66-67
- 旺文社「螢雪時代」2016年8月号