身近な素材「炭素」に触媒機能を付与するナノレベルの構造制御
炭素は身近な材料であり、冷蔵庫の脱臭に使用される活性炭や、鉛筆に使用される黒鉛も炭素ファミリーに属します。炭素はその結合様式や配列の仕方によって、発現する機能が全く異なります。私が研究しているのは、炭素に触媒機能を付与するための構造制御技術です。
炭素がとても高い触媒活性を示すことで知られているのが、酸素還元反応です。この反応は従来、白金触媒が担っていた触媒機能であり、白金触媒と同等の性能を有する炭素を創出することが私の目標です。触媒機能を持つ炭素は「湾曲構造」を有することが明らかになっています。これはフラーレンのように1つの球体になっているのではなく、波打った炭素網面が繋がったような構造です。本来、平面的に連続するはずの炭素網面が湾曲することで触媒機能を発現します。
私は、何もしなければ平面になってしまう炭素網面を湾曲させるために、金属粒子を配置する手法を提案しています。この湾曲した炭素について、酸素還元活性以外の触媒機能についても解明を進め、炭素を触媒材料として世に送り出したいと考えています。
物質・環境類
助教 小林 里江子
- Kobayashi, R.; Ishii, T.; Ozaki, J.-i. Construction of Warped Graphitic Layers from Fullerene Soot and Study of Their Catalytic Oxygen Reduction Activity. The Journal of Physical Chemistry C 2023, 127 (51), 24564-24573.
- Kobayashi, R.; Ohno, T.; Ozaki, J.-i. Efficient preparation of carbon materials composed of warped graphene layers via in-situ nano-templating and estimation of oxygen reduction reaction activity. Carbon 2024, 118910.