化学でガン治療

光化学反応を利用したガン治療

 ガン治療法の発展は世界中で求められています。現在の主な治療法である外科手術、化学療法、放射線療法は強力である反面、副作用が非常に強い問題があります。
 光線力学療法は光増感剤(薬剤)と光を組み合わせた新しいガン治療法です。この治療法では、薬剤である光増感剤がガン部位に選択的に集積し、光を照射すると活性酸素種を生成します。この活性酸素種がガン細胞を壊死させる治療法です。この治療法では副作用が小さく、治療後の生活の質が改善できると期待されています。
 私達は光化学を基盤技術として、光線力学療法に用いる光増感剤の開発を行っています。治療効果の向上を目指した研究では、光増感剤であるポルフィリン誘導体にケイ素置換基を導入することによって、活性酸素の生成効率やガン組織への集積効率が向上することを見出してきました。その結果、ガンの光治療効果が大きく改善できることを発見しました(図参照)。またこの他にも副作用の低減を目指し、ガン細胞内でだけ薬剤が光に応答するような光化学的な仕掛けを施す研究も行っています。

物質・環境類
准教授 堀内 宏明
  • 科学研究費補助金基盤研究(C) 2019-2021年度「3つの低pH応答機能によって高いガン選択性を有する光ガン治療薬の創製」
  • H. Horiuchi et al., ChemPhotoChem , 2019, 3, 138-144.
  • 特許4899065号 含ケイ素置換基を導入した化合物、並びにそれを含む一重項酸素発生剤及び癌治療薬
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