触媒で有機ケイ素の新合成反応を発見する
ケイ素はパソコン内部の集積回路や太陽電池パネルなどの半導体素子として有名です。それらを炭素でデコレーションしたのが、「有機ケイ素」化合物です。これは、半導体の性質を持つケイ素、有機物の柔らかさを組み合わせた新しい材料として注目されています。しかしその合成は難しく、わずかな水や空気で分解してしまう原料や、引火性の高い試薬を用いなければ作ることはできません。そこで私は、有機ケイ素化合物をもっと簡単で安全に合成できる反応の開発を目指し研究をしています。
では、どんな方法で目標とする反応をみつけるのでしょうか?私の研究では、「金属触媒」がその鍵を握っています。触媒とは、少し加えるだけで化学反応を活性化してくれる化学物質のことです。これまでに知られている触媒反応では、ケイ素同士のつながりを壊した生成物しか得られませんでしたが、ある種のチタン、およびルテニウム触媒を利用することで、ケイ素の骨格を壊すことなくきれいに反応が進むことを発見しました。
知られている金属触媒だけでも非常に数が多く、またそれがどんな反応に適しているかは、実際に反応させてみるまで分かりません。どうすれば望む反応になるのかを、学生たちと一緒に日々あれこれと考えながら研究を進めています。
物質・環境類
准教授 菅野 研一郎
- Kanno, K.; Aikawa, Y.; Kyushin, S. “Ruthenium-catalyzed alkoxylation of a hydrodisilane without Si−Si bond cleavage”, Tetrahedron Lett. 2017, 58, 9-12.
- Kanno, K.; Niwayama, Y.; Kyushin, S. “Selective catalytic monoreduction of dichlorooligosilanes with Grignard reagents” Tetrahedron Lett. 2013, 54, 6940-6943.
- Kanno, K.; Maemura, Y.; Kobayashi, N.; Kyushin, S. “Synthesis of silyl-substituted anthracene derivatives via birch-type silylation” Chem. Lett. 2013, 42, 112-114.