おいしさの分析法の可能性を探る
「新しい食材がないのなら、新しいテクスチャー(食感)を考えればよい。」これが今世紀の調理法のトレンドになっています。テクスチャーの創造には、理化学系の実験器具や、多糖をはじめとするテクスチャーモディファイヤー(食感改質剤)を積極的に利用する分子調理の技法が応用されています。現在ではこの技術の体系化が一通りすすみ、今後の課題としては、いかに新しい調理技法を開発できるかが重要です。
わたしたちは、理工学的アプローチでこの問題に立ち向かうために、新しい食品分析法の開発と、その分析結果に基づいて新たに考案される調理加工法の提案をおこなっています。ここでいう食品分析法とは、単に既存の分析プロトコルを改良することではなく、まったく新しい情報を得るための手法を指します。
現在開発中のフードスキャナーは、食品の栄養成分の三次元分布情報を完全に非破壊で分析する装置です。この装置が開発されれば、食品中の成分分布がまるでCTスキャナやMRIのように非破壊断層像として得られるようになるため、農産物の生育状況の評価や、調理加工過程での食材の物理化学的変化をリアルタイムで追究できるようになります。
また、これと並行して、テクスチャーモディファイヤーの分子形態や物理化学特性を瞬時かつ世界最高精度で分析する装置を開発しています。テクスチャーコントロールの手法は勘と経験に基づいて手さぐりでおこなわれていますが、新しい分析技術の助けを借りることでその労力を大幅に削減できるようになります。
物質・環境類
助教 高橋 亮
- 科研費若手研究(A) 2013~2016年 「食品の栄養成分の分布状態を三次元分析し可視化するフードスキャナーの開発」
- 農林水産省・新たな事業の創造-緑と水の環境技術革新プロジェクト事業 2012年 「主食として食べられる水溶性食物繊維高含有大麦食品」
- 経済産業省・中小企業等製品性能評価事業 2008年 「モル質量・粒子径の絶対測定装置の開発」