ヌスキューブの合成と応用

ヤヌスキューブの構造

 ヤヌス(Janus)というのはローマ神話に出てくる二つの顔を持つ神です。物事の始まりを司る神で、1月(January)の語源にもなっています。その神にちなんで名付けられたヤヌスキューブとは、図にあるように、立方体構造のシロキサン(ケイ素と酸素からなる、きわめて耐熱性の高い骨格です)の両側に4個ずつ違った種類の置換基がついた化合物です。これまでに、ヨーロッパ、日本、米国で合成が試みられてきましたが、8個ある置換基のうち、4個を同じ向きに揃えてつけることが大変困難で、今年に入るまで単離できた例もなかったのですが、私達の研究室で合成、単離、X線構造解析による構造の決定まで行うことができました。
 このような新しい骨格をつくることができるようになると、これまでになかった優れた性質を持つ材料を設計することができます。ハイブリッド材料というのは、無機化合物と有機化合物のいいところを併せ持つ次世代の材料で、今盛んに研究が行われていますが、無機物と有機物をどのようにくっつけるかが大きな課題になります。ヤヌスキューブの一つの面に、有機化合物と結合できる置換基(ビニル基やアミノ基、チオールなど)を配置し、反対側に無機化合物と結合できる置換基(シラノール:Si−OHなど)を配置すれば、有機物と無機物をナノレベルで結合させることができ、究極のハイブリッド材料として、エコタイヤや表面保護などの用途への応用が期待できます。
 私たちは、さらに第二世代、第三世代のヤヌスキューブ合成を目指して、現在も研究を続けています。

物質・環境類
教授 海野 雅史、  准教授 武田 亘宏
  • N. Oguri, Y. Egawa, N. Takeda, and M. Unno, Angew. Chem. Int. Ed. 55, 9336-9339 (2016).
  • 日本経済新聞(H28.5.12)、読売新聞(H28.6.3)、Yahooニュース(H28.5.28)など
  • 特願2015-204578(H27.10.16)
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