天然多糖類のらせん構造と化学修飾
多糖のらせん構造,ゲル,集合体
多糖はグルコースなどの単糖類が共有結合でつながった高分子であり,環境適合性と生体親和性に優れた材料として医薬品や食品などに広く用いられています。天然で産生する多糖にはらせん構造を持つものもあり,水溶液やゲルなど様々な状態で存在します。これらの多糖の物理化学的性質や薬理作用は化学構造の違いだけで無く,固有のらせん構造に由来しています。また,多糖のらせん構造は,タンパク質や核酸などの生体高分子との集合体の形成などにも関係します。近年は,その薬理作用だけでなく,集合体を利用したドラッグデリバリーシステムの研究が盛んに行われています。
我々の研究室では水溶性の多糖を主に研究しています。その中でもスエヒロタケから産生するシゾフィランは水溶液中で三重らせん構造を形成しており,大変堅い棒の形をしています。このため,濃度の高い水溶液中では棒が並んで液晶になります。図1に偏光顕微鏡を使って撮影した写真を示します。写真に見られる縞模様はコレステリックピッチと呼ばれ,液晶構造がらせんを巻いていることを表しています。研究室では,その他の多糖についても化学反応を用いてその性質を変化させ,多糖という魅力的な材料を広く利用できるように研究を行っています。