質の新しい状態を求めて

 私たちの研究室の主な研究テーマは、量子磁性体における新しい状態の探求です。これだけだと何のことだかわかりにくいので、例え話をします。
皆さんが、ある惑星の生物であると思ってください。その惑星には、硬い地面(固体)と空気(気体)しかなく、皆さんはその中で生きています。(どうやって生きているかはわかりませんが・・・)その惑星を皆さんがさまよっていると、あるとき、水を満面にたたえた湖を発見します。生まれて初めて見る「液体」です。皆さんの驚きはいかばかりでしょうか。見たこともない状態の物質をみて「何だこれは」と思うでしょう。そして(知的好奇心旺盛な人であれば)その性質を詳しく知りたいと思い、嬉々としてその「液体」の研究を始めるでしょう。
 話を磁性体に戻します。私たちの身の回りにある物体の中には、小さな磁石のような性質をもった粒子(磁性イオン)が整然と並んでできた物質があります。それらの物質は、構成要素である磁性イオンが量子力学に従うことから、量子磁性体と呼ばれます。この量子磁性体の多くでは、高温では各イオンの磁石の向きがばらばらになっている状態(気体)が、低温では各イオンの磁石がある特定の向きに固定された状態(固体)が実現されます。これらは既によく知られている状態です。しかし、磁性イオンの種類やその並べ方を変えてみると、磁石の向きがばらばらではないが固定されてもいない、新しい状態が出現することがあります。新しい磁気的状態の発見です。私たちの研究室では、そのような新しい磁気的状態が実現される物質を探索し、その性質を解明する研究を行っています。

基盤部門
准教授 引原 俊哉
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