数たちが織りなす世界

整数論的な関数の代表例

 数学の中に整数論と呼ばれる分野があります。皆さんの高校教科書にも少しありますが,整数論は,整数たちに関する性質の研究です。このような研究は我々の生活への応用もあります。インターネット上でメールをやり取りしたり買い物をしたりするとき,その安全性の確保のために,実は整数論の話が使われています。行き来に関して効率の良いネットワークの構成にも,整数論の話が使われます。ランダムな数列を作り出すためにも,実は整数論が有効です。
 本研究室では,整数論の中でも,特に「整数たちに関連する関数たち」の性質を研究しています。一例を挙げてみます。素数たちは無限個存在するという事実は,皆さんの多くも知っていると思います。これは,紀元前3世紀頃には既に証明されている事実です。現在では様々な証明が知られていますが,図に載っている関数f(x)を考察するものが現代的な証明の1つです。素因数分解の一意性によれば,この関数は,素数たちに渡るある積の形に書けることが分かります。Nを大きな実数とするとき,N以下の素数たちは何個ぐらいあるでしょうか?実は,約N⁄log⁡N 個あるということが知られています。(よって,特に,素数たちは無限個存在することが得られます。)この事実は「素数定理」と呼ばれる定理で,先ほどの関数f(x)の性質を調べることによって証明されます。さらに,この素数定理に関してもっと詳しい予想があり,それはリーマン予想と呼ばれる現代数学における重要な未解決問題と同値なものです。

基盤部門
准教授 名越 弘文
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