ナノ・ミクロ組織制御による革新的材料開発
最近の工業製品には、金属、高分子材料、セラミックスおよびそれらの複合材料など、様々な革新的材料が使用されています。また、様々な優れた材料を一つの製品の中で適材適所に使用するマルチマテリアル化が進んでおり、それら異種材料を繋ぐ技術も重要です。材料および異種材料界面の研究開発には、材料や界面で起こる物理化学的現象をナノ・ミクロレベルで解明し、その組織を制御することが必要です。図は、自動車や各種コネクタなどに使用される銀めっき膜(厚さ:約0.01 mm)のめっき後の結晶方位変化を解析した例です。銀の結晶格子は、皆さんが化学で学ぶように面心立方格子をしています。輝いて見える銀めっき膜は、数十μm(1 μm = 0.001 mm)程度のサイズの結晶粒が集まってできています。個々の結晶粒の格子の向きは異なった方向を向いています。電子顕微鏡と解析コンピュータを用いると、銀めっき膜表面における各結晶粒のサイズおよび格子の向き(配向)の変化をリアルタイムに観察できます。図の例では、めっき直後にナノレベルであった結晶粒が成長して、6時間後にはでほぼ全面が赤色で示した(001)面に配向したことがわかります。この配向を制御することで銀めっき膜の耐摩耗性、電気特性および加工性などを向上することができます。我々の研究室では、めっき膜のナノ・ミクロ組織の制御により、図中で青色に示される(111)面に配向させることにも成功しています。
物質・環境類
教授 荘司 郁夫
- 「機械材料学」 荘司郁夫・小山真司・井上雅博・山内啓・安藤哲也 著、丸善出版
- 「-エレクトロ二クス実装における- マイクロ接合と信頼性設計法」荘司郁夫・折井靖光 著、科学情報出版