指先で摘めるデバイスで“創る”生体器官

指先で摘めるデバイスで“創る”生体器官
新薬開発には莫大な時間と費用を要し,その開発成功率は年々低下し続けています。この問題の一因は,薬剤候補化合物の薬効や安全性を評価する適切なシステムがないことにあります。現在は主に実験動物が用いられますが,ヒト生体とは乖離があるためヒトでの薬効や安全性を予測するのは困難です。
実験動物の代替としてヒト細胞が考えられます。ヒト細胞は,確かにヒト生体に近い機能を持つのですが,培養の継続や機能の保持が困難です。生体内では,ヒト細胞は非常に複雑な物理化学的な環境の中で存在しています。裏を返せば,そのような物理化学的な環境がなければ機能を保持した状態で培養を継続することができないのです。
そこで,半導体加工などに使用される微細加工技術により作製したマイクロ流路を持つデバイスを作製し,その構造を用いて物理化学的な環境を再現することで,ヒト生体機能を模倣するシステムを開発しています。このシステムは“生体模倣システム”と呼ばれています。
生体模倣システムは,実験動物を代替し,薬剤開発の効率化に貢献することが期待されています。また,生体を模倣することを目指したものであるため,臓器発生過程の理解や疾患の病理解明への貢献も期待でき,裾野の広いシステムであり幅広い分野に応用可能です。
電子・機械類

助教 髙田 裕司
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- Cells sorted off hiPSC-derived kidney organoids coupled with immortalized cells reliably model the proximal tubule Ramin Banan Sadeghian, Ryohei Ueno, Yuji Takata, Akihiko Kawakami, Cheng Ma, Toshikazu Araoka, Minoru Takasato, Ryuji Yokokawa Communications Biology 2023年5月4日.
- Evaluation of Trans-epithelial Electrical Resistance by Removal and Replenishment of Extracellular Ca2+.